図解入門よくわかる解剖学の基本としくみ (メディカルサイエンスシリーズ)

図解入門よくわかる解剖学の基本としくみ (メディカルサイエンスシリーズ)の詳細

２００６年の本。著者は順天堂大学医学部教授（解剖学・生体構造学）である。曰く・・・ヒトの身体機能は、（１）生命を維持する植物機能（消化器系、呼吸器系、泌尿器系など）と（２）生命を活用する動物機能（骨格系、筋系、神経系など）に大別できる。肩甲骨をぶら下げている筋肉は、上肢の重さを支えるためにいつでもある程度は収縮しているが、これが肩こりの原因になる。筋肉は収縮するためにエネルギーを使う。エネルギーを生み出すためには血液が送る酸素が必要。ところがこれらの筋肉は動きが少ないので（収縮しっぱなし）、血液循環が悪くなってしまう。運動して、あるいは、マッサージで静脈弁を圧迫・開放することで血液循環を促す必要がある。むくみ（浮腫）は、毛細血管から水がにじみ出て、細胞の間に水分が余分にたまっている状態をいう。脚の毛細血管は重力のおかげで静脈の血液が心臓に戻りにくく、毛細血管から水がにじみ出やすい。人体にはおよそ２７０種６００個の筋肉がある。多くの動物について調べると、脳の大きさは身体の大きさの０．６６乗に比例する。これを基準値として脳の大きさを比較したのが脳化係数。イヌやネコは基準値に近い１付近、チンパンジーは２．５、イルカは５．３、ヒトは７．４。瞳孔の直径変化は２倍強なので、網膜に届く光の量は５倍程度しか調節できない。網膜の感度は、杵体（白黒だけ感じるが感度が高い視細胞）と錐体（色は識別できるが感度は低い視細胞）の切り替えによって１０００倍も変化する。明暗順応は主に視細胞の働きによる。歯はヒトの身体の中でもっとも硬い素材。最外殻のエナメル質はカルシウムが９５％であり水晶に匹敵する硬さがある。十分に噛んで十分に味わうと幸せになれる。唾液の働きで食べ物から味が引き出されるし、口からの刺激は脳を刺激して頭がよくなる。歯をなくした老人は脳の老化が進みやすい。心臓が規則正しく拍動するのは、心筋に自ら周期的に興奮する性質があるから。胃の働きは食物を一時的に蓄えて小腸に送ること。小腸は食物を消化吸収するが、その処理速度には限界がある。それを上回る量の食物が小腸に入ると気分が悪くなってしまう。かといって少しずつ絶え間なく食べ続けるわけにもいかない。胃は生命に不可欠というわけではないが、良好な社会生活のために役立っている。小腸は、腸間膜というカーテンのようなものでぶら下げられて体内固定されている。膵臓はインスリンを作る。インスリンは細胞がブドウ糖を取り込むのを助ける。インスリンが不足すると細胞はブドウ糖を吸収できなくなる。これが糖尿病。膵臓はグルカゴンも作る。グルカゴンは細胞がブドウ糖を新たに作って放出するように促す。食べ物がないときには身体に蓄えた栄養を利用するため。たいていの動物はインスリンとグルカゴンのバランスがとれているが、現代人は食べ物が有り余っているためにインスリンばかり使われ、これが糖尿病の原因になっているといわれる。口から取り込まれる水の量は１日１．５リットルくらいだが、唾液１．５リットル、胃液３リットル、胆汁＋膵液で１．５リットル、腸液２．４リットルほどが加わる。そのうちの９５％は小腸で吸収される。小腸が吸収する水分は８リットルもあり、その大部分は消化管から分泌されたもの。こうして食物が大腸にたどり着くときにはお粥状態になっている。大腸の役割は、お粥状の内容物から水分を吸収してしっかりした糞塊を作ること。肝細胞は再生能力旺盛。しかし、炎症などによる障害が何度もくり返されると肝細胞が失われ、結合組織の繊維が肝臓の組織内に増えていく。これが肝硬変であり、こうなると肝臓は健康な元の状態に戻れなくなる。肝臓はブドウ糖を取り込んでグリコーゲンという多糖類にしてしばらく蓄える。空腹時にはグリコーゲンを分解してブドウ糖を血液中に放出する。肝臓は血液中のブドウ糖濃度を一定に保つ。シーザーが開腹分娩で生まれたから「帝王切開」と名付けられた、という話はウソ。みたいな話。