蜜嫁さがし (双葉文庫)

蜜嫁さがし (双葉文庫)の詳細

一気に双葉官能の中軸に躍り出た感のある乃坂希。今年を締めくくるにふさわしい作品だった。他の作家と、明らかに異なるのは、最近の女子の雰囲気が活写されているところ。登場する女性たちは、いずれも、ひと癖。ふた癖ある女たちで、従来の作家のように「夢のような女」「物語上都合の良い女性像」にはしていない。実にリアルだ。第一章のラストでまず裏切られる。「そんな子だった」のだ。第二章では、主人公がラストに人妻の現実感に思わず「引く」という官能小説では、珍しい幕切れ。これもリアルで、そういう経験は意外とあるものだ。その後も登場する女性が、すべて、カッコイイが難敵だ。乃坂希は、女の描き方が実に巧みだ。ラストは圧巻のハッピーエンド。そこに辿り着くまでの物語性が素晴らしい。前作「人妻遊泳」でも、脇役にイケている女子大生が登場するが、今作でも「恋の指南役」で登場する女子大生が、超カッコイイセリフを吐く。ここにとくに嵌った。カクテルや、背景描写も、お洒落で、読んでいてワクワクしてくる。ライトノベルに深みを持たせた官能小説。各章のタイトルも、お洒落でとてもいい。「運命の二十四時間」「サヨナラの向こう側」「紫煙は目にしみる」「シンデラレの忘れ物」「いけないロープマジック」「こちらの世界でアイラブユー」。草凪優のデビュー当時を彷彿させる、メジャー感あふれる作家だ。しばらく嵌りそうだ。