本当はダメなアメリカ農業 (新潮新書)

本当はダメなアメリカ農業 (新潮新書)の詳細

アメリカ農業が「ダメ」という表題だが、本書を最後まで読んでも「ダメ」の定義がはっきりしない。アメリカの農家や業界や政策が多くの問題を抱えていることは分かったが、それはどこの国/地域/業界でも同じことであって、筆者はそれをもってダメと言っているのだろうか？売らんかなのために偏差値の低い表題をつけたものである。内容としては過去の訴訟や事件を羅列した感があって、筆者の分析や見解は薄く、ナリチュウ記事の域を出ないように感じる。また多くの統計データを扱っているのだから、読者の理解を助けるために本来であれば表やグラフを多用すべきテーマであるにもかかわらず、本書には表が2ページしかない。統計データを地の文でダラダラ読まされる苦痛に、筆者は思いが及ばないのか？加えて、アメリカ農業について語るのであれば、大きな国土を持つロシアや中国などの農業とも比較しなければ、そもそもこの地球という惑星における大規模農業がいかにあるべきかについて語れないはずであり、バランスを欠くように感じる。環境汚染や農薬やGMや抗生物質の問題は、ロシアや中国のほうがより深刻である可能性はないのか。一方で、アメリカの農村の自殺率や薬物汚染が深刻であることや、種子・農薬メーカーの市場寡占が、アメリカ農家の貧困化を招いていることなどは、ぜひ知っておくべきことだ。